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『明日、世界がこのままだったら』(行成薫)感想|生と死の“狭間”で問う、あなたの存在意義


🌳『明日、世界がこのままだったら』

「生きてる意味がわからない」「誰かと分かり合いたい」
そんな想いを抱えたあなたに届けたい、静かであたたかな物語——。

生と死の“狭間の世界”で出会った男女が、自分の存在と向き合う“再選択”の物語です。
本記事では、あらすじ・魅力・感想・おすすめ読者タイプ・類似本まで、
読みやすく丁寧にご紹介します(読了時間およそ5分)。

著者: 行成薫
出版社:集英社
刊行年:2021年(単行本)、2024年(文庫本)


📖あらすじ

ある朝、目覚めると、世界には誰もいなかった。
見知らぬ男女・サチとワタルは、静まり返った空間で出会う。

「ここは、生と死の“狭間の世界”」
——そう告げるのは、謎の“管理人”。

実は、彼らの肉体はすでにこの世を去っていた。

だが、“現実への帰還”という奇跡が提示される。
——ただし、帰れるのはどちらか一人だけ。

それは、希望ではなく、選ぶことの残酷さだった。

——私は、俺は、何のために、誰のために、生きるのか。

生と死の狭間で、ふたりがたどる“選択”と“再生”の物語。

あなたなら、どちらを生かしますか?

命と向き合う“狭間の世界”で綴られる、
心を揺らす物語。


この本を読む前に知っておきたい5つのこと

  • “狭間の世界”というテーマ設定:生と死の境界に二人はどう向き合うか。
  • 少女漫画的発想からの発展:当初はデフォルメされた男女ものから、心に響くリアルな描写へ
  • ファンタジー×リアルの絶妙なバランス:非日常だけど違和感なく心に届く設計
  • 二人の関係の描写が丁寧:感情移入しやすいキャラクターになっている。
  • アッチェレランド的リズム:登場・葛藤・選択のサイクルが読みやすく没入しやすい

こうした背景を知ることで、物語の中にある“静かな問いかけ”が、あなた自身に届くかもしれません。


🫶こんな人におすすめ

  • 「このままでいいのかな」とふと不安になる人
  • 生きる意味を漠然と考えている人
  • 現実と非現実の境界に惹かれるファンタジー好き
  • 静かに心を揺さぶられる感動作を探している人
  • 二人の対話が中心のシンプルな物語が好きな人
  • 設定が強すぎず、自然に入り込める長編を読みたい人
  • 泣けるより“沁みる”物語が読みたい人

📚この本が好きならこちらもおすすめ

『君は月夜に光り輝く』佐野徹夜

【もし、大切な人の“余命”を知っていたら——あなたは、どうしますか?】

不治の“発光病”にかかり、入院生活を送るまみず。
彼女の“やってみたいこと”を、クラスメイトの卓也が代わりに体験し、語り届ける。
それは二人だけの“人生の代行”だった。

水族館、観覧車、花火大会——
やがて訪れる別れのとき。
「卓也くんが、生きてくれてよかった」
残された光が、未来を照らす。
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『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文

【初めて会ったその瞬間から、“別れの日”が決まっていたとしたら——あなたは、恋をしますか?】

京都の美大に通う高寿は、通学電車で出会った愛美に一目惚れする。
やがて二人は恋人になるが、彼女はある“秘密”を抱えていた。
それは、高寿とは正反対の時間軸を生きる存在だということ。

彼の“明日”は、彼女の“昨日”。
交わる時間は、たったひと月。

限られた時間の中で交わされる約束と想い——
涙があふれるラスト、きっともう一度、最初のページに戻りたくなる。


『明日、世界がこのままだったら』を読んで ──はるのぽつり。

生と死の“狭間”に呼び止められた二人。
誰かのために生きたいと思う気持ちと、
自分の命を差し出すという決断の間で、揺れ続ける心。

選ぶことって、こんなにも静かで、苦しくて、優しいんだ。

もし自分がそこにいたら——私は、誰を選ぶのだろう。

この物語は、「生きて」と言われることより、
「生きていいんだよ」と、そっと背中を押されるような気がしました。

小さな灯が、胸の奥で、まだ消えずに揺れています。

迷いながら、それでも前を向きたいと願うあなたに、
この静かな物語が、そっと寄り添ってくれると信じています。