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🌳『君のクイズ』
著者: 小川哲
出版社:朝日新聞出版
刊行年:2022年10月

📖あらすじ
クイズ番組決勝戦。
最後の一問、出題が始まる前に相手の本庄は回答して正解した。
いわゆる「ゼロ文字正答」。
敗者となった三島は、その不可解な正解に強い違和感を抱き、調査を始めた。
なぜ彼は問題を聞かずに答えられたのか。
偶然だったのか、それとも必然だったのか。
クイズの先にあった『君のクイズ』に、君は正解できるのか——。
この本を読む前に知っておきたい5つのこと
- ページ数は約190ページと短め
物語のボリュームはコンパクトながら、その中に問いや違和感がぎゅっと詰まっています。
短時間で読めるのに、読後はしばらく思考の余韻が残る——そんな一冊。
読書の時間があまり取れない方にも、週末の夜や通勤時間でじっくり楽しめます。 - ジャンルは“クイズ×ミステリー”
クイズという舞台装置を通して描かれるのは、知識ではなく、人の思考や動機。
「なぜそう答えたのか」「なぜ答えられたのか」
その背景にある構造と心理をたどることで、読者自身が“真相”へと近づいていく体験が待っています。 - 舞台はテレビ番組の決勝戦
物語のほとんどがクイズ番組の決勝という、たった一つの場所で進みます。
それでも飽きずに読めるのは、目まぐるしく展開する会話劇と、時間制限のある“勝負”の緊張感のおかげ。 - ゼロ文字正答の仕組みは実在?
「出題が始まる前に、答える」——そんな非現実のような現象が、本当にありうるのか。
本作は、実在する競技クイズのルールや技術をもとに構成されており、現実と虚構の狭間で読者を揺さぶります。
競技クイズの知識がなくても問題なく読めますが、知っていればさらに深く楽しめる仕掛けも。 - “答える”とは何か?という哲学性
クイズの正解・不正解にとどまらず、本作が描くのは「どうやって答えるか」という姿勢そのもの。
本庄と三島、二人の思考や価値観のぶつかり合いを通して、
「答え」とは何か、「答えること」に意味はあるのか——
そんな静かで本質的な問いが、心にじんわりと残ります。
🫶こんな人におすすめ
- 時間があまりなく、手軽に本を読みたい人
- 初めてミステリー作品に挑戦する人
- クイズ番組が好きで、裏側を知りたい人
- 頭を使う小説が好きな人
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『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼

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『リバー』奥田英朗

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刑事、記者、遺族、そして加害者——それぞれの視点が交錯する中、語られない“内面”が物語を支配する。
渡良瀬川の流れのように静かで重たい筆致が、読者を現実と地続きの“闇”へと引き込む。
圧倒的なリアルを描き出す、社会派ミステリーの到達点。
『君のクイズ』を読んで ──はるのぽつり。
「答え」は、いつも正解があるとは限らない。
『君のクイズ』を読み終えたあと、胸の奥に小さな波紋が広がっていくようでした。
それは、ただのミステリーじゃない。クイズの正解を当てる物語でもない。
たった一問をめぐって、私の心が、静かに揺さぶられていくのを感じました。
読んでいるうちに、昔の自分がふと顔を出しました。
あのとき、どうしてあんなことを言ってしまったのか。
なぜあの選択をしたのか。
思い出しても答えの出ない“問い”が、今になってそっと浮かんできます。
物語の中で誰かが答えを出すたび、
「本当にそれが正解だったのかな」と、少しだけ胸が痛みました。
でもそれと同時に、
“正解”って、あとから見えてくるものなんじゃないかな……と思えたのです。
クイズが好きな人も、そうじゃない人も。
わたしたちの毎日も、ある意味では「答えを探すクイズ」なのかもしれません。
答えが出ない日もあっていい。
そう思えるようになるまでの時間も、きっと、大切な一部なんだと思います。