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『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』あらすじ・ネタバレなし感想|“時間のズレ”に涙する恋愛小説


🌳『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

人生がすれ違うふたりの、奇跡の7日間。
時間の流れが逆のふたりが紡ぐ、切なくも美しいラブストーリー。
「好きな人と永遠に一緒にいたい」──そんな想いが、こんなにも苦しくて温かいなんて。
本記事では、小説『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』のあらすじ・感想・おすすめ読者層・類似作品まで、静かな感動の魅力を“読了5分”で解説します。

著者: 七月隆文
出版社:宝島社文庫
刊行年:2014年


📖あらすじ

京都の美大に通う高寿は、通学電車で出会った愛美に一目惚れする。
やがて二人は恋人になるが、彼女はひとつの“秘密”を抱えていた。
それは──高寿とは正反対の時間軸を生きる存在だということ。
彼の“明日”は、彼女の“昨日”。
交わる時間は、たったひと月。
限られた時間の中で交わされる、いくつもの約束と想い。
涙があふれるラストに、きっとあなたはもう一度、最初のページをめくりたくなる。


この本を読む前に知っておきたい5つのこと

  • 時間がテーマの物語
    SFというより、“時の流れ”と向き合う静かな恋愛小説。
    難しさはなく、日常の中で生きる二人のすれ違いが丁寧に描かれます。
  • ネタバレ厳禁の構造
    展開の仕掛けが感動を左右するため、できれば事前情報は少なめで。
    最後まで読んだときの衝撃と余韻が、この物語の真価です。
  • 京都の風景描写が美しい
    叡山電車や鴨川など、静かな情景が物語に深みを与えています。
    京都に行きたくなるような描写の数々に、地元の人なら特に心を動かされるはず。
  • 映画版も話題に——視覚表現との違いも楽しめる
    2016年、福士蒼汰×小松菜奈主演で映画化。
    映画とは異なる演出や余韻の違いも見どころです。
  • 読みやすく一気読みできる一冊
    平易な文体で、読書に不慣れな人にも優しい構成。
    気づけば一気に読み進めてしまう没入感があります。


🫶こんな人におすすめ

  • 泣ける恋愛小説が読みたい人へ
    仕掛けに気づいた瞬間、静かに涙があふれます。
    何度も読み返したくなる優しさと切なさに包まれた物語です。
  • 京都が好き・住んでいたことがある人へ
    叡電や鴨川など、実在する風景が情景描写に溶け込んでいます。
    思い出の景色と物語が重なり、没入感が一気に高まります。
  • 伏線回収のある物語が好きな人へ
    ラストに向けて丁寧に繋がっていく構成が見事。
    読み終えたあと、思わず最初のページをめくりたくなる仕掛けが待っています。
  • 映画を観てから原作を読みたい人へ
    映像では描ききれない心理描写や内面の機微が、小説では丁寧に描かれています。
    感情の奥行きがより深く伝わってきます。
  • “時”というテーマに惹かれる人へ
    同じ時を生きながら、すれ違っていくふたりの姿が、“今”という瞬間の尊さをそっと教えてくれます。
    時間に心を寄せたくなる一冊です。
  • 休日に一冊で読み切りたい人へ
  •  → コンパクトな文量で、スッと読めてしっかり心に残る。静かな感動を味わいたい休日にぴったりの作品です。


📚この本が好きならこちらもおすすめ

『君の膵臓をたべたい』

【大切な人の「余命」を知ってしまったことはありますか——】
ある日、偶然見つけたのは、クラスメイト・山内桜良の“秘密の闘病日記”。
彼女の命が、もう長くないと知った僕は、彼女との奇妙な日々を過ごすことになる。
明るくて自由で、どこか強がりな彼女との時間は、少しずつ僕の世界を変えていった——。
これは、たしかに“生きていた”という証をめぐる、ひとつの青春の物語。
そして読むあなたの“生き方”にも、そっと触れてくる。

『君が落とした青空』櫻いいよ

【もし、大切な人との“最後の時間”を、やり直せるとしたら…あなたは何を変えますか?】
すれ違いばかりの彼氏・修弥と、久しぶりにちゃんと向き合えた、はずの日。
彼が事故に遭った瞬間から、私の時間は繰り返し始める。
彼を救う未来はあるのか? それとも、想いを伝えるだけでいいのか?
繰り返すたび、浮かび上がる“本当の気持ち”。
何気ない日常の中にある後悔と祈りを描いた、切なくて優しいタイムループラブストーリー。


『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を読んで ──はるのぽつり。

もし、今日が「誰かの昨日」だったとしたら——

そんな風に考えるだけで、今この瞬間が、とても愛おしく思えてくる。

誰かとすれ違った帰り道、ふとしたひと言に救われた夜、名前も知らない人の笑顔に心がほどけた朝。

日常のなかにあるたくさんの“偶然”は、もしかしたら“必然”だったのかもしれない。

この小説の最大の魅力は、派手な展開や驚きのどんでん返しではなく、
「すれ違う時間を、どうやって大切にできるか」という静かな問いかけにあります。

未来と過去、始まりと終わり、出会いと別れ。
どれも線のようにつながっていて、でも重なることはない。

それでも、交わる一瞬の奇跡を信じたくなる——

恋の始まりにワクワクし、秘密に胸がざわつき、
やがて訪れる別れの予感に、どうしようもなく涙してしまう。

ページをめくるたび、私たちの日常にも「奇跡」が確かにあるんだと、そっと背中を押されるような感覚になります。

そして読み終えたあと、きっと誰もが「最初のページをもう一度開きたくなる」。

だってそれは、愛美の“最初の日”でもあるから。

どうか、あなたの「いま」も、優しさで満たされていますように。

それが、誰かの「大切な昨日」になりますように☘️