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『カフネ』あらすじ・感想|阿部暁子×本屋大賞の心温まる小説

心をなくした女と、想いを届ける女が出会ったとき——

最愛の弟を突然失った29歳の野宮薫子は、
自分の生活すらままならず、心を閉ざしていた。

そんな彼女が働くことになったのは、
家事代行サービス「カフネ」。

そこにいたのは、弟の元恋人・小野寺せつな。
無口で不器用なせつなが、
料理を通して人の心をほどいていく姿に、
薫子の心にも変化が訪れる。

喪失、癒し、再生——。

誰かを思う気持ちが、日常を静かに温めていく。
優しい物語が読みたい人へ贈る、心をほどくヒューマンドラマ。


この本を読む前に知っておきたい4つのこと

  • 「カフネ」とは、ブラジルの言葉で「愛する人の髪に指をとおすしぐさ」
    タイトルの由来を知っておくだけで、本作に流れるやさしさが一層胸に沁みます。
    登場人物たちの関係性や行動が、「触れられる優しさ」をテーマにしていることが見えてくるはず。
  • メインテーマは「喪失」と「癒し」
    最愛の弟を失った女性と、弟の元恋人。
    二人の静かな再会から物語は始まります。
    誰かを失った悲しみに共感できる人ほど、そっと心を抱きしめられるような一冊です。
  • キャラクター同士の関係性がじんわり深まる
    主人公・薫子とせつなの距離感が少しずつ変わっていく過程に注目。
    最初はぎこちなくても、丁寧なやり取りが心の距離を近づけていく様子は、
    読後も印象に残るでしょう。
  • 日常の中にある“ささやかな希望”が光る
    大きな事件は起きません。
    でも、登場人物たちが誰かのためにした一皿の料理や、
    たたんだ洗濯物に込めた想いが、読む人の心をじんわり温めてくれます。

🫶こんな人におすすめ

  • 大切な人を思い出したい人
  • 何かを失った悲しみを感じている人
  • 優しさに飢えている人
  • 現状を変えるために一歩を踏み出したい人
  • 余韻が残る静かな物語に惹かれる人
  • じんわり温かくなれる物語が好きな人

📚この本が好きならこちらもおすすめ

『ツナグ』辻村深月

【もう一度だけ、会いたい人はいませんか?】
死者と生者を一度だけつなぐ“使者(ツナグ)”。
恋人、母、親友、それぞれの別れと再会の物語を経て、少年・歩美も自身の「忘れたい過去」と向き合っていく。
別れの先に見えるものは、後悔か、希望か。

大切な人を想うすべての人に捧ぐ、優しくて切ない奇跡の物語——『ツナグ』

『夜のピクニック』恩田陸

【静かな足音のなかに、忘れられない時間が紛れていたとしたら。】
高校最後の行事「歩行祭」。
80kmを夜通し歩く特別な一日が始まる。
ただの学校行事のはずが、いつもと違う空気の中で交わす何気ない会話、
思わぬ再会、誰かの秘密……。
足を進めるごとに、クラスメイトとの距離も、心の中のわだかまりも変わっていく。

歩くことしかできない一晩が、忘れられない青春へと変わっていく——。


『カフネ』を読んで ──はるのぽつり。

もし今、部屋の中が少しだけ散らかっていたとして、
心の中も、どこか同じように、まとまらないままだったとして。

それでも、あなたのことを“片づけよう”なんて、誰も思っていないよね。
そっと寄り添って、あなたのペースで、一緒に整えていけたら──

そんなふうに思える物語でした。

『カフネ』に登場する人たちは、うまく笑えなかったり、不器用だったり、傷を抱えたままだったりします。
それでも誰かを思って、今日という日を丁寧に過ごしていく。
その姿が、読んでいる私たちの暮らしにも、そっと重なるような気がしました。

きっとあなたにも、“あの人のために”と思って、何かをした日があるよね。
それが報われたかどうかじゃなくて、その気持ちがあったこと自体が、ちゃんと意味を持っていたんだよって。


この本は、そんなふうに語りかけてくれます。

少しだけ深呼吸して、また一歩進みたくなる。
そんな静かなあたたかさを、今夜もあなたの傍に。

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